大雪山国立公園における登山道・野営指定地の侵食と登山道・野営指定地の維持管理に関する研究
(最終更新日 15 February 2020)

(概要)
 環境省や大学の社会科学系の研究者らと協力して,登山道の維持管理を中心に,山岳国立公園の新しい維持管理の方策を考えています。私は,このなかで,特に,登山道侵食に着目して,登山道の土壌侵食がどれくらいの速度で進行してきたのかを見積もり,今後,進行するのかを予測しています。登山道の土壌侵食速度の見積もりには,断面測量を繰り返しておこなうことによって,登山道表面の形態の変化を明らかにして,侵食量を"断面積"で表現して,測量期間で割って,速度を計算する手法をとってきました。1989年以降,この手法を用いて,すでに3つの修士論文研究で,大雪山国立公園内の登山道の土壌侵食速度が見積もられてきました。これらの研究に加えて,最近では,UAV(ドローン)やポールフォトグラフィを使って撮影した写真から3次元図化を行い,登山道や野営して一の土壌侵食量の計算を行っています。
 大雪山国立公園では,環境省が「近自然登山工法」を取り入れ,また全国ではじめて「登山道のレベル区分」を試行し,現在では改訂された「大雪山グレード」と呼ばれる登山道の区分を行っています。これらのアプローチを全国に展開していくために必要な学術的支援を行っています。また,海外からの訪問者・登山者用に,英語の解説文をつけた地形図Asahi-dakeを出版しました(Amazonや主要書店で購入できます)。
 また道外では,フィンランドの国立公園での登山道荒廃や,国宝三徳山投入堂(鳥取県三朝町)への行者路の荒廃を管理するための助言も行っています。

登山道関連の修士論文研究・博士論文研究

  • 高田悠太郎 (2020): GPSロガーを用いた大雪山国立公園における利用者の行動パターンと特性の分析. 北海道大学大学院環境科学院修士論文.
  • SHA, Shuo (2020): Profiling ecotourists from Daisetsuzan National Park, Japan and Taroko National Park, Taiwan. Master's thesis submitted to Hokkaido University.
  • WANG, Ting (2019): Users’ impacts on the Kuro-dake Campsite in Daisetsuzan National Park and the necessity of proper management for the future. Master's thesis submitted to Hokkaido University.
  • 張 暁露 (2019): 大雪山国立公園におけるジオパーク認定のポテンシャル評価と関係団体の意識に関する研究. 北海道大学大学院環境科学院修士論文.
  • SUN, Danni (2018): Daisetsuzan Grade: its characteristics and contribution to the nature conservation. Master's thesis submitted to Hokkaido University.
  • 石川正樹(2016): 登山道侵食の3次元計測手法の開発と大雪山国立公園におけるその適用. 北海道大学大学院環境科学院修士論文.
  • 平山健太郎(2013):日本の登山道の持続的な維持管理に関する研究―大雪山国立公園の登山道協働型維持管理体制をもとに―. 北海道大学大学院環境科学院修士論文.
  • 小林勇介(2012):北海道の主要山岳48山における登山道侵食の分布と形態ー登山道侵食に関する台帳と地形学図の作成ー. 北海道大学大学院環境科学院修士論文.
  • 太田健一(2005):デジタル写真測量による登山道侵食把握と侵食軽減のための新たな方策ー大雪山国立公園を例としてー. 修士論文.
  • 土栄拓真(2004): 大雪山国立公園・表大雪山域におけるツアー登山の実態と利用者管理の方向性. 修士論文.
  • 沖 慶子(2001): 大雪山国立公園,黒岳石室周辺における登山道の保全のための研究. 修士論文.